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石じじいの話・殺生の結末
石じじいの話の話です。
あるところに、殺生の大好きな男がいました。
彼は、毎日のように山に猟に行きました。
山に狩猟小屋を持っていて、ときには、数日、山にこもって猟をすることもありました。
ある夜、彼は猟にでかけました。
その日は闇夜だったのですが、獲物がまったくとれません。
獣の気配もないのです。
彼は、さびしくもなったし、あきらめて家に帰りました。
帰ってみると、家は真っ暗でした。
中に入って家人の名を呼んでも誰もこたえません。
だれもいないのです。
火の気もなく、家の中はひんやりとしていました。
家の中は、きれいに整理されていて、無くなったものは何もありませんでした。
食事をしたあともないし、料理をした形跡もない。
人だけがいなくなった状態でした。
その日から、彼の家族は行方不明になってしまったそうです。
「そのひとは、がいに殺生しよったけんのう、ばちがあたったんやろうかのう。うち殺した鹿や猿にも家族があったろうにのう」




