石じじいの話・蒙古の衛生状態・医療状況(満州)
ここで紹介されている蒙古の風習は、現在、まったく存在しません。
モンゴル国(長らく、モンゴル人民共和国)や中華人民共和国政府によって、その生活環境は大きく改善されています。
この話は、差別の意図はないことをご理解ください。
石じじいの話です。
じじいが満州を旅したとき、満州医科大学の日本人研究者(医師)と知りあいました。
じじいも、かつて衛生兵だったので、保健医療に興味があり、彼との話がはずんだそうです。
彼が、そこで語った話です。
蒙古人の健康状態については、満州医科大学が調査を行った。
蒙古人には、神経系;呼吸器系;消化器系の疾患が多いが、精神系の病気(精神病)は少ないようだ。
天然痘もある。
外科では、結核が多い。
眼病が特に多くて、ほとんどがトラホームだ.
性病も多い。
気をつけるように!
皮膚病だと疥癬が、普通に見られる。
彼らは、シャーマンによる祈祷に頼るので、医療が手遅れになるのがこまりものだ。
ラマ教の影響力が強いのだが、そのラマ僧も堕落していて、性病の媒介者だ。
ペストもある。
気をつけるように!*1
蒙古人の生活は、衛生的とは言えない。
顔や手を、簡単に冷水であらうが、体は洗わない。
彼らには、「垢を洗い落とすのは、幸福を洗い落とすことである」という迷信がある。
蒙古人の出産は、このようなものだ。
パオの中で産褥を過ごす。
自分の家族や近隣の経験のある婦人が産婆の役をする。
産婆という専門職は少ない。
分娩のときには、仏壇にバターの灯明*2を用意して、火をたく。
まあ、魔除けだろう。
パオのなかに乾燥した牧草か白い砂を敷いて、産婦が、その上に座って、念仏や拝火して陣痛を忍ぶ。
嬰児を分娩すると、へその緒を馬の尾の毛で緊縛して、小刀で切断するのだ*3
温水で嬰児を清めて、汚物は牧草や砂とともに野外に捨てる。
産婦は、5から10日の休養をとって、その後は、平常の労働に従事するのだ。
医師が付け加えて曰く:
「出産のときにはな、嬰児を盗りにくる者がいるのだそうだ。
彼らを、それを恐れる。
その正体を尋ねてみると、働き手を欲しがっている他の遊牧民の場合もあるし、また、魔物のこともある。
後者の場合は、新生児は食われてしまうということだ。*4
まれに、そのような魔物に養育されることもあり、長じて、彼らも「魔物」になる。
そして、人を喰うために拐うようになるのだそうだ。」
「気をつけろよ(笑)。」
*1 ペストはどうやって防ぐのでしょうか?
*2 バターを燃やす灯明の炎は、ろうそくの黄色い炎とは違って白いのだそうです。
*3 さすが、医師。使う単語が医学的です。
*4 マハチン(食人者)の話がありました。
「石じじいの話・引用:食人鬼についての二つの話(朝鮮・蒙古)」




