石じじいの話・短い話:製紙工場の臭い;"犬首峠"
石じじいの話です。
石探しの旅の途中で聞いた話を2つ。
1. 海沿いの、ある集落の近くには、大きな製紙工場がありました。
その集落の人が言いました。
「ここいらは、製紙工場の匂いがするんだが、たまに、死体を焼く匂いがするんだ。」
「わかるだろう、動物の焼ける匂いが。」
「なぜだろうな?」
と。
2. これは、明治よりも前の時代の話のようです。*1
ある藩で、死罪になった農民がいました。
斬首刑でした。
町中では血で汚れるということで、山中で処刑が行われました。
そこは、昔からの処刑場だったと。
その農民の首が切り落とされたとき、一頭の大きな白犬が茂みから飛び出してきて、転がる首を咥えて走り去りました。
武士たちは、追跡しましたが、近くの峠で見失ってしまいました。*2
最後に峠で見たとき、その白い犬の口のまわりから胸は、首からの血で真っ赤に染まっていたそうです。
この事件のあと、その藩の城下では、たまに同じ毛並みの犬が生まれるようになりました。
白い犬ですが、口から首、胸にかけての毛が赤いのです。
その犬が生まれて数カ月すると、その藩では必ず斬首刑者が出たそうです。
そのときの峠が、通称「犬首峠」*3
*1 まだ、斬首刑が残っていた明治時代初期だという記述が、私のノートの別の部分に見られます。
*2 ノートの別の部分に書き残されている同じ話では、その犬は、その峠まで逃げたところで、銃で射殺された:とあります。
*3 「犬鳴峠」というのは、有名ですね。




