石じじいの話・短い話:沼の縄;山道の風音
じじいは、小学生の私には、自殺や殺人のような残酷な話やエロ話は、してくれませんでした。
じじいなりの「教育的」配慮だったのでしょう。
中学生になって、その分野(?)の話を少ししてくれた記憶がありますし、そのような話が、聞き取りノートにあります。
この話は、じじい以外の人から聞いたのかもしれませんが、じじいが語ったものとして紹介します。
石じじいの話です。
1. じじいが山を歩いていると、小さな沼に行きあたりました。
その岸には、大きなびわの木が生えていました。*1
びわの木からは、沼に向かって長い大きな枝がはりだしていましたが、その先のほうから、縄がぶら下がっていたそうです。
ぶら下がっている場所は、岸から沼へずいぶん離れたところで、また水面からも高く、その直下に船を浮かべて立っても、とどきません。
木に登っても、その枝まではつたっていけません。
その部分は、もう細くなってしまっていて、折れてしまうからです。
この縄の目的も不明でした。
先は「首吊り縄」のような輪はなく、硬く縛ってありました。
それに、これにぶら下がっても、枝が下にたわむか折れてしまい、目的は達っせられそうにありませんでした。
2. こどもじじいは、学校で先生の使いで、ひとりで山道を歩いていました。
すると、急に強い風が吹きつけてきて、そのとき、背後に母親の声が聞こえたそうです。
じじいは、まわりを見回しましたが、だれもいません。
じじいは、手を合わせて拝みました。
すこし、泣いたそうです。
昔は、先生が生徒に用事をたのんで、学校から外に遣ることが普通だったのです。
もちろん、放課後にです。
*1 びわの木は、川岸など水辺に生えていることが多いようです。




