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石じじいの話・短い話:夫の微笑み;いなかったかもしれない;愛人の手紙
石じじいの話です。
じじいの聞いた話です。
1. ある戦争未亡人が、じじいに語りました。
「夜半すぎに玄関を静かに開けると、夫の微笑みがあるのです。」
戦後すぐの話です。
2. 街中の公園で、男の子と女の子、二人がなかよく遊んでいるのを、じじいは見ていました。
それを見ていた、近くにいた初老の女性が、じじいに言いました。
「あの子たち、いなかったかもしれませんね。」
山陽地方の大都市でのことです。
戦後すぐの話です。
3. ある中年の女性が、夫にあてられた手紙を見つけ出して、いつも怒っていました。
これらは、夫の愛人から送られてきた手紙だ!というのです。
「手紙の内容が、とても、いやらしい!その愛人と夫は、とても愛しあっている関係だろう!」と。
その手紙は、かつて、彼女じしんが夫に送ったラブレターだったのですが。




