石じじいの話・短い話:闇のホタル狩り;死ぬまでブランコに
石じじいの話です。
じじいが出会った人たちについての話です。
1. 真夏の夜に、ホタル狩りをしている人がいたそうです。
ご存知の通り、四国では、真夏は、もうホタルのシーズンではありません。
その晩は、闇夜で真っ暗でした。
ホタルなど一匹も飛んでいません。
じじいが、懐中電灯を点けて川沿いを歩いていると、急に電灯の光の中に人が現れました。
驚いたじじいは、思わず、「だれだ!」と誰何してしまいました。
歩哨の兵隊のように。
その人は、女性で、竹箒をもっていました。
昔は、虫とりあみではなく、竹箒を振りまわして、飛んでいるホタルを捕まえていました。
飛んでいるホタルが、その竹箒の細竹にとまるのです。
「いえ、あやしいものではありません。子供のためにホタルをとっているのです。」と、その女性。
じじいは、この時期では、もうホタルは少ないということを伝えて、先を急ぎました。
関わらないほうが良いと思ったからです。
そのあと、まわりには、川の流れの音だけが響いていたそうです。
2. じじいが夜、旅先の宿に急いでいたとき、夜の公園で、母親と思われる女性が女の子をブランコに乗せて遊ばせていたそうです。
そのときでも、夜遅くに子供を外で遊ばせるのはまれでした。
親が同伴しているといっても。
母親が、夜の仕事をしているのか?とも考えました。
その女性は、女の子に言いました:
「死ぬまでブランコに乗せてあげようね。そう、死ぬまでね。」




