石じじいの話・短い話:山の綱に気をつけろ;森のすべてを歩く;おらぶ縄
石じじいの話です。
じじいの経験談です。
1. じじいが石さがしのために山を登るとき、麓の村人が忠告してくれました。
「この山のには、木の間に延々と綱を張られていることがある。
それを伝って歩くと、落とし穴に落ちるから注意しろよ」と。
「そんな綱は危ないので、見つけると切断するのだが、次には、また、もとに戻っているのだ。」
「切ったところを結び直しているのではなくて、どこにも切れ目がない状態に戻っているのだ」
「だれが、綱を張っているのかわからない。」
じじいは、山の中で、その綱を見つけたので、持っていたナイフで切ろうかなと思ったのですが、やめました。
「なんか、怖いけんね。」
落とし穴を見つけてやろうかとも思いましたが、もし落ちたら危ないので、やめました。
「落とし穴は、意外なところにあるもんやけんのう。」
綱は、灰色に変色して、一部に苔が生えた、かなり古いものだったそうです。
2. じじいは、ある森で若い男性に出会いました。
その人が言うには、
「私は、この森の『すべての場所』を歩かなければならないのです。」
「そうしないと、母や妹が幸せになれないのです!」
「私は、この森のすべての樹木を覚えているから、迷わないのです。」
「そうか。頑張りんさいよ。」と、じじい。
3. じじいが山を歩いていると、大木の枝から縄が垂れ下がっていました。
縄の端は、切断されたように切れていて、じじが腕を伸ばせば届く高さにありました。
じじいは、縄の真下に行って、それを掴んで引っ張りました。
その瞬間、大きな叫び声がしたそうです。
その声に驚いて縄を手放すと、縄は、するすると上のぼって消えたのです。
「縄がおらぶとは思わんかったい。腰抜けるかと思うたで。」
「じゃが、なんで、縄をひっぱろう思うたんじゃろうのう?あのときのう。」と、じじい。




