石じじいの話・短い話:一周するな!;方舟だ!
石じじいの話です。
じじいの経験談です。
1. そこを一周すると、その人が死んでしまう墓があったそうです。
だから、その墓のまわりを回りきるな!と。
かならず、出発点まで一周せずに途中で引き返せ!
それは、ある家の立派な墓でした。
その家の人たちは、怖がっていましたが、そのために、その墓にお参りしなくなるということはありませんでした。
ただし、なにも知らない、知っていても行動を制御できない子供は、墓参りに連れて行かなかったり、お参りのあいだ、しっかりと抱きかかえていたそうです。
じじいも、その墓にお参りしたそうですが、どこにでもある普通の墓だったと。
ただ、その墓石の断面は真四角ではなく、ややひし形だったのです。
2. じじいが子供の頃、ある男ともだちが、くだものの木箱の中に猫を入れて、それを川に流しました。*1
その友人は、
「ほら!方舟だ、方舟だ!」と叫んでそれを眺めていたそうです。
木箱は、板の隙間から水が入って、沈んでしまいました。
見ていた、じじたちには、どうしようもありませんでした。
子供だったり、大きな川で、流れが急でしたから。
その友人は、満足そうに家に帰っていったそうです。
もちろん、その子の家族は、キリスト教徒でもユダヤ教徒でもなかったのです。
*1 昔は、りんごなどのくだものは、ダンボール箱ではなく、木箱に入っていました。
「貧乏なので、りんご箱を仕事机にしていた。」という話が、昔の漫画家の自叙伝にでてきます。




