表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
石じじいの話  作者: Lefeld
51/595

石じじいの話・薬物中毒

これは、薬物中毒の話であり、これまた微妙な話題です。

じじいからの聞き書きであり、話の内容が医学的に正しくないかもしれません。

注意して読んでください。

不都合なら削除します。

石じじいの話です。


じじいは、石探しの旅の途中で、モルヒネ中毒者と知り合ったそうです。

彼は、すでに廃人に近い状態でしたが、なんとか会話が可能でした。

親戚の家で世話をされていました。

その親戚が、石の収集家であり、じじいは、そのコレクションを見せてもらいに訪れたのです。

本人によると、その中毒者は、数年前に盲腸炎の手術をうけ、そのときに初めてモルヒネ注射をしました。

さらに、パラチフスを患って、さらにモルヒネを使用したのです。

それで、モルヒネ中毒となり、自分で皮下注射をするようになりました。

何度も、やめようとして、次第に量を減らしていたのですが、我慢できず反動としてさらに多くを注射するようになってしまい、強い良心の呵責に苦しめられたそうです。

彼は、治療のために病院に入院したのですが、体調は改善しませんでした。

不眠状態であり、早朝から倦怠感があり、食欲不振で朝食などは食べない。

全身の痛みを感じる。

頭蓋骨と脳の隙間を獣がはっているような感じがする。

あたりが常にまぶしい。

口が渇く。

声質が変わる。

性欲が消失してしまった。

それに、発作が起きるようになりました。

彼は、モルヒネの注射を打ってくれと、病院内を歩き回るようになりました。

「モルヒネをくれないと自殺するぞ!」と叫ぶ。

「看護婦を殺してこの病院に火をつけるぞ」と叫ぶ。

脈拍数は、108を超えて、顔面が蒼白、呼吸が切迫して、苦しんで病室内を転げ回りました。

「金をやるから病室から出してくれ!」

それが受け入れられないとわかると、罵詈雑言を発し、号泣し慟哭したのです。

以上の話は、ほとんど聞き取れない本人の独白や、世話をしている親戚からの情報です。

この中毒者は、医専で学び、優秀な成績で医者になりました。

その腕前もよかったのですが、酒癖が悪く、酔うと青ざめてすぐに喧嘩をするような人物だったそうです。

自分の病院を経営したこともあるようですが、不況のあおりでうまくいかなくなり故郷に帰ってきて、病気を患いモルヒネを使って中毒になってしまったのです。


衛生兵の教育を受けていたじじいは、中毒者の体を診ることになってしまいました。

じじいは医者でもないので、そのようなことをするのを断ったのですが、家族や本人から是非にと望まれたのです。

おかしい。容態は、まさにモルヒネ中毒者のそれなのに、腕にも、どこにも注射の痕がない。

じじいが、首を傾げていると、

「おわかりいただけましたか。そうです。彼はモルヒネなど使ったことはないのですよ。」

と親戚の男性は、じじいに静かに言ったそうです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ