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石じじいの話・戦争の話:残された人々 3:娘の仇
石じじいの話です。
戦後すぐの話です。
ある戦争未亡人が、野良犬を斬り殺したそうです。
戦死した夫の軍刀で。
なぜ犬を殺したのかと尋ねたところ。
「あの犬は、娘を食い殺したのだ。その敵をとったのだ。憎い犬の顔は忘れない。」
と。
首のない犬の死体は、道端に転がっていましたが、その犬の首が見つかりません。
探していると、道端の溝の中に男性の生首が落ちていました。
その首は、するどい刃物で一刀両断に切り落とされていたそうです。
一応、警察が捜査しましたが、その未亡人は無関係ということが判明しました。
結局、その男の生首の身元はわからなかったそうです。
犬の体が「娘を殺した本体」だったのか?
男の首が本体だったのか?




