石じじいの話・暑い海
石じじいの話です。
友人の漁師から聞いた話だそうです。
その漁師は、冬に夜釣りにでかけました。
大漁で、ほくほく顔で家路を急いできました。
夜明け近くの黎明のなか、見知った岬が見えています。
「よし、帰ったわい」と思った瞬間、急にまわりが昼間のように明るくなりました。
いや、昼間より明るい。
思わず空を見上げると、大きな太陽が天頂に輝いていました。
その太陽は、見ている間に大きくなり、まわりが真っ白に見えるほど明るくなったのです。
そして、真夏のように暑くなったそうです。
どんどん気温は上昇します。
冬なのに大汗をかいて、頭がクラクラしてきました。
あまりにも暑いので、服を脱いで全裸になったそうです。
混乱しながら陸に向かって急いでいると、急に真っ暗になりました。
目が明るさになれていたので、真っ暗闇で何も見えません。
空は真っ暗でした。
その時には、すでにまわりは薄明るくなっていたのでしょうが、目が光に慣れてしまっていたのでしょう。
同時に、気温が急激に低下しました。
水風呂に飛び込んだようだったそうです。
暑さをしのぐために裸になっていたので、心臓麻痺になりそうだったと。
港に帰って、この話をしましたが、案の定、
「なに、おかしなこと言いよるんぞ?舟の上で酒飲んじょると海に落ちたら死ぬぞ!」




