石じじいの話・息子復活
この話には、現在は不適切と思われる言葉が出てきます。
その使用において差別の意図はありません。
石じじいの話です。
ある農家の息子は、低能でした。
「白痴に近い痴愚」と思われました。
ある日、彼は行方不明になりました。
失踪しそうな理由もなかったのですが。
家出したのか?
あの知能で、そんな考えがあるのか?
本人の知能が低いので、出歩いていて家への帰りかたがわからなくなったのかもしれない。
みんなで周辺を探しましたが見つかりません。
失踪当日の目撃者もいませんでした。
金を持っていないので遠くには行けないだろう。
たとえ金を持っていたとしても、彼が交通機関を利用できるとは思われない。
神隠しではないか?
そのようなオカルト的な理由は受け入れられません。
失踪して1カ月ほどすると、彼は、帰ってきました。
さっそうとして。
いなくなったときと同じ服装でしたが、ひどく汚れていたそうです。
これまでどこにいたのか?と尋ねても、彼は「わからない」と言うだけでした。
彼には、大きな変化が見られました。
頭が良くなっていたのです。
聡明な人間になっていました。
とても、同一人物とは思えないのです。
別人ではないか?という意見もでたのですが、彼の身体の特徴は、たしかに本人のものです。
狐のような魔物に騙されているのでは?という人もいたのですが、それは、あまりにも非科学的で一考の価値もない。
医者にみせたのですが異常なし。
身体的にも精神的にも健康でした。
家族は、それで納得し、彼は無事に成長しました。
神童として。
彼は、立派な成績で学業をおさめて職を得、出世しました。
人格も高潔で、立志伝中の人として、地元では敬愛されたそうです。
結婚し、子供に恵まれ、幸福な人生をおくりました。
彼の子どもたちも皆賢く、家は栄えたそうです。




