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石じじいの話  作者: Lefeld
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石じじいの話・憑霊(つきもの)製造所

石じじいの話です。


つきものを作る工場があったそうです。

じじいが、ある町の食堂で食事をしていると、見知らぬ男が話しかけてきました。

「金でも探しているのか?」とその男はたずねてきます。

じじいが足元に置いていた背負いバッグの様子や、そこから柄が出ているハンマーなどの岩石採集道具を見たからでしょう。

じじいは、いや、珍しい岩石や鉱物を探している。このあたりは、XXという鉱物が採れるのだ、と答えると、その男はえらく感心していたようです。

男性は、じじいに興味を持ったらしく、いろいろと尋ねてきて、また、このあたりの地理や歴史について説明してくれたそうです。

まあ、歴史には興味は無いのですが、彼がする地学的な話はとても興味深かったのです。

どうも、その男性は、ある程度の科学知識を持っているようでした。

その男性は、いいものを見せてやろうといって、家に誘ってきました。

じじいは、あやしいなと思い、最初は断りましたが、彼は熱心に誘います。それに珍しい鉱物を見せるから、と。

まあ、話のたねになるか、と思ってじじいは警戒しながらも彼の誘いにのることにしました。

彼は、町のわりと中心部にある、工場のような大きな家に、じじいを連れていきました。

窓が極端に少ない建物でした。

これは、まずいぞ!とじじいは思ったのですが、彼には柔道や剣道の心得もあったので、まあなんとかなるだろうと覚悟したのです。

その家の一階に入ると、そこは二十畳ほどの大きな部屋でした。

床はコンクリートで、土足でした。

お、これはすぐに逃げることができるな、とじじいは少し安心したそうです。

そこは、「実験室」のようなものでした。

部屋を見渡して、じじいは、動揺しました。

その中央部に長い机があり、その上に人、おそらく女性、が寝ているのです。

その、女性の机のまわりには、いくつかの机があり、その上には、たくさんのフラスコやビーカー、メスシリンダー、調剤用の道具が所狭しと並んでいます。

壁には大きな本棚があり、たくさんの本や書類箱が収まっています。

木製のキャビネットもあり、また流しもあります。

実験室です。いや、解剖室ではないのか?

じじいの頭は混乱しました。

その男性は、おどろくじじいの顔を見て、満足そうに説明をします。

これは、憑霊を作る装置だ。

じじいは、彼の言葉をすぐには理解できませんでした。

すると、奥のドアが開いて、そこから一人の二十歳前くらいの女性がでてきました。

お約束どおり白衣を着ています。

彼女は、助手だ、と、その男性は、これまた満足そうに彼女をじじいに紹介しました。その女性助手は、なかなか美人でしたが、まったく表情をくずさないのです。

そうだ、机の上に横たわる女性のことです。

その女性の頭には、おそらく金属でできた半球形の箱?がかぶせてありました。

それには、いくつかの電極がついていて、それにはコードが繋がっています。

その何本かのコードは、ずっと延びて、別の机に置いてある「機械」に接続されています。

その「機械」には、メーターやダイヤルがたくさんついていましたが、それらについての表示やメーターのスケールは読み取れませんでした。

じじいには、数字ではない、その文字が読めなかったのです。

男性、じじいは博士と呼んでいましたが、は説明しました。

今から、この女性の憑霊を作るのだ。

この女性は、憎み恨んでいる男性がいる。それを呪うために、彼女がその男に憑つのだ。

これは、そのための装置だ。

私が、ある鉱物から調合した特殊な薬を何種類か服用した後、この装置に接続するのだ。

人体を接続する?とじじい。

この装置で体にある種の電流を流すと、憑霊が生まれる。

それは、この装置で直接、空気中に「放電」され、相手の男の体に入るのだ。

ただし、この装置の欠点は、稼働させた後、装置を使った人の人格が少し変化することだ。

じじいの頭は、クラクラしました。

博士は語気を強めます。

「この装置を使えば、自分の望みを叶えるのに、祈祷師や御札や呪文などは必要ない。あんなインチキはだめだ!」

いやいや、あんたがインチキじゃないのか?とじじいは思いましたが、口には出せませんでした。

「君には、だれか呪殺したいやつはいないか?」と博士が尋ねてきたので、じじいは、これは長居は無用だと思って、理由をつけて立ち去ることにしました。

じじいは、自分が拘束されるのではないかと緊張していましたが、博士はあっさりと別れを告げてきました。

「そうか、それは残念だ。この実験室のことは秘密にしておいてくれ。もし、必要な時は尋ねてきてくれ。いつでも大歓迎だ。」

じじいは、二度と来ない、と決心しました。

博士が、特殊な薬を作るために用意していた鉱物は、ちょっと見たところ、閃亜鉛鉱や菱マンガン鉱のようで、自然金と思われるものもあったそうです。

あれが金なら、かなりの値打ちがあっただろうと。

じじいが家を出たときには、もう黄昏時でした。いがいと長い時間、じじいはその実験室にいたのです。

実験室の窓をみると、そこから、フラッシュのように点滅する青白い光がもれていたそうです。

これは、「唯物論的呪術」とでも言えるかもしれません。

この装置の原理はわかりませんが、まあ、わかる人はいないでしょうけど、現在、実用化されて稼働しているのかどうかが心配です。

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