石じじいの話・臨死体験:祖母と草引き;観音様の母
石じじいの話です。
臨死体験は、よく語られる話です。
それが、宗教心の萌芽となることもあります。
典型的な臨死体験の書式は:
死んだら、暗い道を歩いていくと川が流れている。
そこを、渡れない。
すると、生き返る。
また、そこで人に会う。
彼らに、「おまえは、ここに来るのはまだ早い」と言われて生き返る。
というのが、一般的(?)でしょう。
じじいが話してくれた臨死体験について書いてみましょう。
これらは、すべて、他人の経験談だそうです。
1. ある人が死にました。
その人には、首をつって死んだ祖母がいました。
死ぬと、彼は池のほとりに立っていました。
そこで、その祖母が草引き(草むしり)をしていたのです。
働き者の祖母でした。
彼は、「死んでからも草引きをしなくてもよい」と言いながら、祖母の肩を抱いて立たせようとしましたが、彼女は、「ここの草だけは引いていく」といって動こうとしませんでした。
彼は、草引きを早く終わらせようと思い、自分も一緒になって、祖母とならんで草引きをしたそうです。
そこの草引きが終わった時、祖母は、「お茶でも飲むか」といって、近くに置いてあった水筒からお茶を湯呑に汲んでくれました。
それを飲んだら目を覚ましました。
生き返ったのです。
2. ある人が死にました。
死んだあと、森の中を歩いていると、切り株に人が座っていました。
木こりか?
近づいてみると、それは観音様でした。
観音様は、彼を見ると、「まあ座れ」といって横の倒木を指さしました。
その人は、座って、観音様と世間話をしたそうです。
自分の生い立ち、生きていたときの苦労や喜び、家族のことなどを話しました。
観音様は、彼のことをよく知っているようで、絶妙の合いの手を入れてきました。
それで、彼は興に乗って、長い時間、話つづけたそうです。
話疲れて、ふと我に返ると、観音様は、彼が子どもの頃に死んだ母親になっていました。
母親は、やさしくほほえみながら、彼を見ていたそうです。
声をかけようとしたとき、目を覚ましました。
生き返ったのです。




