石じじいの話・ドーロクジンの墓
石じじいの話です。
この話では、場所がわかっているのですが、内容から、それを伏せます。
じじいが、ある地方を訪れたときの話です。
道祖神(ドーロクジン:このように、私の聞き取りノートには書かれています。)の信仰がある村を訪れたときです。
その村では、村の入口にドーロクジン(道祖神)をたてて、そのときにも祀っていたそうです。
村人は、その祀りを「火事見舞」と呼んでいました。
昔、疫病神が村に入ろうとするのを村人が見つけて、それに、「俺の家へ泊まれ」と言って、道祖神小屋に泊めました。
そうしておいて、その夜に小屋に火をつけて、疫病神を焼き殺してしまったのです。
その御礼に、ドーロクジンに火事見舞いをするのだと。
いつも、ぼたもちを供えていたそうです。
道祖神の石像は、村への山道のわきにあったのですが、その後ろは山で、その斜面には、たくさんの墓石のようなものがたっていました。
じじいが訪れたときは、初冬で、葉が落ちて見通しが良かったので、その「墓」が道から見えたのです。
雑草の生い茂った、樹木の葉の茂った夏だったら、気づかなかったでしょう。
村人が言うには、「あれは、行き倒れを葬った墓だ」と。
じじいは、疑問に思ったそうです。
なぜ、そのような墓を道祖神の近くにまとめてたてているのか?
なぜ、そこに葬っているのか?
そもそも、何をもって「疫病神」であると決めつけたのか?
「道祖神小屋」で焼き殺されたのは、「疫病神」なのか?




