石じじいの話・不思議な家:座敷わらし(?)の指紋
石じじいの話です。
じじいは、不思議な家について、よく話してくれました。
今までも、いくつかの話をまとめて紹介したことが何回かあります。
これも、不思議な家の話です。
ある家では、密室に置いた粘土に指の跡や手形が残っていることがありました。
指の跡が一本、二本、三本と。
指紋が残っていました。
その指紋は、家族のだれのものとも一致しません。
粘土は、主人が趣味で陶芸をしていたので、そのための粘土だったのです。
粘土は細目の赤土でした。
指紋や手形がつけられるのは、この赤土粘土のみであり、他の粘土にはつかないのです。
とても保存の良い手形がついていたことがあり、それは小さい子どもの手形のようでした。
しかし、その家に、そんな子供はいない。
このときは、「手相」が鑑定できるほどはっきりしていたそうです。
まるで、座敷わらしのようだと、みんなで話しあっていました。
しかし、この手形が残るからといって、悪いことも良いことが起きるわけではありませんでした。
もちろん、粘土を置かないと、そのようなことは起きません。
かわりに、紙と墨を置いてみましたが、それで指の跡などがつくことはありませんでした。
主人は、その「座敷わらし(?)」に、できるだけ多くの手形や指の跡をつけさせようと、粘土を板状にのばして置いておくようにしました。
うまくいきました。
あるとき、顔の一部が押し付けられた跡がのこっていました。
額から眉、頬、鼻先の跡でした。
左側のものでした。
やはり子供のように小さい顔です。
眉毛のあとものこっていましたが、形の整ったきれいな眉だったそうです。
それだけでは、男女の区別はつかなかったのですが、情報量の多い証拠です。
もちろん、そんな子供は、その家にはいない。
粘土は陶芸用のものだったので、ある時から、その手形のついた粘土板を乾燥させて焼くようにしました。
座敷わらしの「焼き物」です。
それは、その家に家宝として保管されていたそうですが、じじいが話をしてくれた時点で、どうなっていたのかわかりませんでした。
もしかすると、この話を書いている現在も、まだ保管されているかもしれません。
これと同じ話と思われる記録が、別のノートにもありました。
以下のような話です。
あるとき、その粘土の塊をぐっと握った跡がついていました。
子どもの頃、やりませんでしたか?
粘土のかたまりを握りつぶすというやつです。
指の間から柔らかい粘土が、わじくりでた(じじいの故郷の方言で「はみでた」という意味)状態です。
こうして残された深いくぼみは、その子の手の三次元的な印象(雌型)でした。
これは、おもしろいということで、粘土を乾燥させて、そのくぼみに寒天を流し込んで固めてみました。
できあがったのは、子供の小さな手だったそうです。




