石じじいの話・短い話:妻の臭い;さびしいから;おかあさんからの電話;枝打ち
石じじいの話です。
短い話をいくつか。
じじいの経験した話です。
(1) じじいが、ある知り合いの家を訪れました。
町の大きな家でした。
座敷に入った時、なにか異臭がしました。
動物の死体の臭いです。
とても強い臭いでした。
もう我慢できないくらいの。
じじいは、動物の腐った臭いをよく知っていました。
それに、アレの腐った臭いも。
朝鮮での仕事や石探しの際に、それらの死体を見つけることがあったからです。
じじいは、知り合いに気兼ねなく尋ねました。
「なにか臭うね。ネズミでも死んでるんじゃないか?」
「家内が帰ってきてるんだよ。」
その知り合いの男性は答えました。
[そういえば、この人の奥さんは、先月死んだんだったな。]
(2) じじいは、夜中に、友人に急に呼び出されたそうです。
ちょっと非常識ですが、まあ、親しい友人なので急いで彼の家に行きました。
「おいおい、こんな夜中に人を呼び出しておいて、急に笑いだすなよ!」と、じじい。
「ごめん、ごめん、だってさびしいからさ。」と、友人。
(3) じじいが知り合いの男性の家を訪れて、座敷で歓談していました。
彼の娘が、甲斐甲斐しく、お酒やつまみを用意してくれます。
そうしていると、玄関近くの、廊下の黒電話が鳴りました。
娘は、短く受け答えをして電話を切り、座敷に帰ってきました。
「だれからの電話だった?」と、その男性。
「おかあさんから。今から死ぬって」と、その娘。
おいおい、そりゃ、えらいこっちゃっ!おちついとる場合やないでっ!
(4) 友人の孫(男の子)と、友人が所有する山を歩いていました。
その子が、じじいに珍しい石がとれる場所を教えてあげると言うのです。
「この山の杉の木は、おとうさんが枝打ちしたんだね。ずいぶん見通しがいいね。」と、じじい。
「だから、ロープをかける枝がないの。」と、その子。




