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石じじいの話  作者: Lefeld
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石じじいの話・幽霊と結婚する方法

石じじいの話です。


幽霊と結婚する方法があったそうです。

これは、『牡丹燈籠』のような、「幽霊の方から生きている人間にアプローチして冥界に連れて行く」という話ではなく、また、未婚のまま死んだ男性の姿を生きた女性の写真と合成することによって「あの世で結婚させる」という「ムカサリ絵馬」のような話でもありません。

幽霊からアプローチではなく、こちらから、つまり現世(此岸)の側からアプローチするのです。

その方法は、以下のとおり。

まず、結婚したい死んだ女性の私物を身近に置く。

衣服や使っていた文具などでもよいが、ベストなのは、その女性の髪の毛や爪など身体の一部です。

それを、きれいな白い木綿布の上に置いておきます。

つぎに、その女性の「善行」を、紙に書き出していきます。

できるだけ、多くの善行を書き出します。

書き出される善行の数が多いほど、結婚が実現する可能性が高くなるのです。

昔は、半紙に墨で書いたそうですが、近年になると、便箋にペンでインクで書いたようです。

その「善行」は、その結婚を望む人間(=その儀式を行う男性)が知り得ているものでなくてはなりません。

その女性の親族や友人から聞きとった情報を混ぜては効果はない。

ここで、この方法には大きな制約(条件)があることがわかります。

・結婚相手の死んだ女性の私物を手に入れることができること。

・その女性の普段の行動(善行)を、その婚姻希望者が知り得ていること。

この二つの条件は、けっこう厳しい。

また、この儀式で書き出される、女性の善行が少なければ、この術の成功はおぼつかないのです。

善行の少ない女性は呼び出せないし、そのような行為を知らない男性は女性を呼び出せないと。

この「善行書き出し」作業は、日没後、夜間にひとりで行わなければなりません。

こうして、ひたすら善行を書き出していくと、夜明け時に、女性が姿を現すのです。

ということは、この善行を書き出す時間的余裕を確保するためには、夜の長い冬季にこれを行うのがよいということになります。

さて、女性が幸運にも姿を現したら。

夜が明けても女性の姿は消えません。

彼女は、現世に固定されるのです。

そこで、挙式という流れです。

白無垢を着せて挙式です。

盛大な祝言は行いません。

というより、行えないと言うべきでしょうか。

家族だけの祝言です。

新婦側(と呼んでいいのでしょうか?)の家族も、ふつうは招かないのだそうです。

死んだ娘さんを呼び出して「強制的に」結婚させるのは、その親族には承知できないことでしょうから。

法律上の入籍ということはなかったのですが(これは不可能)、挙式の後、数日間は甘い新婚生活が可能です。

数日間は可能?

どういうことか?

数日すると、女性の姿は消滅するからです。

この儀式では、死んだ女性を呼び出して挙式し新婚生活を数日すごすと、ということを実現させるだけのものです。

まあ、それだけでも十分でしょう。

ある時、これだけでは満足しない人が、その女性の死体を掘り出してきて、それに現れた女性を「乗り移させよう」としたことがあったそうです。

もちろん失敗して、彼は犯罪に問われました。

「墳墓発掘死体損壊等罪」でしょうか?

たとえ成功したとしても、すでに腐敗している(しかかっている)死体に、女性の幽霊がのり移ったとしても、その後の結婚生活に支障がでると思います。

失敗したほうがよいでしょう。

ここで、一つ疑問が出てきます。

もし、女性の幽霊を呼び出して婚姻関係をむすんだ場合、その後に彼女が消える時(あの世に戻る時)、夫をそこへ連れて行く危険はないのか?

これは、あったそうです。

お互いに好きあっている場合は、それが起きることがあると。

それを防ぐための方法はあのですが、それについては、私のノートには記されていません。

まあ、愛しあった仲なら、いっしょにあの世に行くというのも幸福な選択と言えるかもしれません。


みなさんもどうですか?

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