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石じじいの話  作者: Lefeld
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石じじいの話・あやしい書物

石じじいの話です。


書物についての話をいくつか書きましょう。


(1) 古本を読んでいると、あるページに「ガガンボ」の干からびた死体が挟まっていました。

植物のさく葉標本状態です。

「もう!」と思って、それを払いのけようとすると、乾燥ガガンボは、急にピクピクと動いて、飛び去ったそうです*。


(2) 指紋がたくさん浮き出た書物があったそうです。

それは、和綴じの古文書でしたが、どのページにも、べったりとたくさんの指紋がつけられていました。

文字の配列とは無関係に、わざわざつけたという感じだったと。

表と裏の表紙には、そのような指紋はないのですが、最初のページから最後のページまでべっとりと指紋がついていました。

インクや墨ではなく、油のシミのようなものでもありません。

強いて言えば、焦げ目のようなものだったそうです。


(3) 内容を、自分で読み上げてくれる書物があったそうです。

ある人が、読みかけの本のページを開けたまま眠ったところ、夜中に、何者かの声で目を覚ましました。

誰かいるのかと思ってあたりを見渡すと、開いたままの本から、その声がしてくるのです。

おそるおそる、耳をすませていると、たしかにその本から声が聞こえる。

その声は、その本の、そのページの内容を朗読しているのです。

声は、男性のものとも女性のものとも判断できない声質だったそうです。

ページの最後まで読み上げると、ふたたび、そのページの最初から朗読を始めるのです。

そうやって、その2ページの内容の朗読を、何度もくりかえしました。

怖いが、その状況に慣れた彼が、思い切ってその本を閉じると、朗読はピタっと止んだそうです。

次の日、その本を閉じておいて、他の本を開いておいて床についても、朗読はされない。

ずっと眠らずにいるのが良くないのか、ということで眠るようにつとめたのですが、眠っても朗読されない。

しかし、あの音量だと、朗読されているのに目が覚めないということはないだろうとも考えられました。

ためしに、同じ本の、そのページの続きを開いて眠ると、朗読されたのです。

不思議な怪しいことだと思いましたが、なにか害をなすわけではないので、次の夜から、その本のページをくりながら、ふとんから少し離れたところに置いて眠りました。

朗読は毎夜続いたそうです。

おもしろいことだが、どうも気味が悪い。

もし、この本の最後まで朗読させたらどうなるのか?

何か凶事が起きるのではないか?あるいは、それを待たずに、なにか不幸が起きるのではないか?

そう思った彼は、その本を古本屋に売り払ったそうです**。

*その古本の内容については、ノートに残されていません。私の記憶にもありません。

**その本のタイトルや内容は、私のノートには残されていません。

みなさんも、あやしい古本には気をつけてください。

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