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石じじいの話・短い話:頭を持って歩く;死をつれて歩く
石じじいの話です。
短い話をいくつか。
じじいの経験です。
(1) 長い石段で有名な宗教施設に友人とお参りしたときの話です。
友人とじじいが、石段をのぼっている参拝客の列を見ていました。
友人が言いました。
「ほら、あの人たちは、みんな頭蓋骨*を持っているんだ。
死の行列だよ。」
(2) じじいは、重病の友人を見舞いました。
その友人は、余命はわずかだということを親族から聞いていたのです。
じじいは、その友人と一緒に、ほんの少し散歩しました。
おぼつかない足取りであるきながら、その友人がじじいに言いました。
「わたしは、『死』をつれて歩いているのですね。」
じじいは、友人の真っ黒な影を見て、そこに死を見たような気がしたそうです。
*解剖学用語としては、頭蓋骨ですが、ここでは、「ズガイコツ」です。




