表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
石じじいの話  作者: Lefeld
39/603

石じじいの話・いくつかの短い話 5:首吊の木;もう7年;この道しか無い

石じじいの話です。


ノートから、断片的な話をいくつか。


(1) 農家の庭先に植わっている柿の木に、たくさんの子どもたちが登って遊んでいました。

それを、ほほえみながら見ている老人に、じじいが、柿の木は折れやすいので気をつけないと*、と言ったら、その老人は、「あれは首吊りの木だからね」と満足そうに言ったそうです。


(2) じじいが、ある家にお邪魔した時、茶の間の押し入れから小さい子供の泣き声が聞こえてきたそうです。

とても、小さい声でしたが、たしかに泣き声でした。

じじいが、家人に、それを伝えようとした瞬間、その家の子供が、「おかあちゃん、押し入れで弟が泣いてるよ」と。

それを聞いた母親は、「もう、7年になるね。」


(3) じじいが、ちいさいとき、母親に連れられて夜道を歩いていました**。

母親に手を引かれて暗い細い道を歩くのを不安に思ったじじいは、「おかあさん、この道、まっすぐなのに暗いね」と、母親にたずねました。

じじいの母親は、「この道しか無いのよ。」と言って、じじいの手をきつく握ったそうです。


(4) 病気で入院した同級生のために、女の子が千羽鶴を折っていましたが、いっこうに作業が進みません。

母親が、「早く鶴を折りなさい。」と咎めると、

「どうして?もうすぐ死ぬのに」と、彼女。

この話は、じじいが他の人から聞いたものだということです。


(5) 人生に悲観して、深く思いつめていた友人の女性がいました。

あるとき、その彼女から電話がかかってきました。

彼女は、いかに自分が絶望しているか、はやく命を断ちたいと思っているかを、くどくどと話しました。

「もしもし、大丈夫か?思い詰めちゃだめだぞ!生きていればたのしいこともあるんだぞ!」と言うと、

彼女は、「ほんとに死ぬときは電話をかけないわ」と言ったそうです。

この電話を受けたのが、じじいだったのかは、不明です。


(6) じじいが、養鶏場のそばを歩いていると、その中から、たくさんの鶏の甲高い鳴き声が聞こえてきました。

その鳴き声のなかに、人の悲鳴も混じっていたそうです。

*柿の木から落ちると三年以内に死ぬ、というのは、枝が折れやすいから登るなという戒めだったとか。

**じじいの母親は、彼が子供のときに亡くなっています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ