石じじいの話・短い話:夕やけ小やけで血を浴びて;寺の鎧武者
石じじいの話です。
短い話をいくつか。
(1) じじいが子どものころ、友だちといっしょに、ため池の堤防で遊んでいました。
夕焼けが真っ赤でした。
子どもじじいも、いっしょに遊んでいた友だちも、みんな夕日を浴びて真っ赤でした。
そこに、みんながよく知っている、近所の部落のおばさんがやってきました。
彼女は、子どもじじいたちを指差して声高に叫びました。
「ほら、みんな真っ赤だ!血を浴びて真っ赤だ!手も脚も、服も真っ赤だーっ!
そして、「気をつけて帰りんさいよ。」と、やさしく言って歩き去ったそうです。
そのおばさんは、いたって普通の人で、優しい人だったのです。
(2) じじいが子どものとき、近くの山寺に遊びにいったら、寺の縁側に鎧武者が座っていたそうです。
落ち武者のような惨めな姿ではなく、立派な鎧を身に着けていました。
その鎧武者は、寺の庭先をじっと見つめて何か深く考えていたようでした。
じじいは、彼に声をかけずに、そっと通り過ぎました。
「いや、刀さしとったし槍ももっとったけんね。へたに声かけて、手打ちにおうたらいけんけんね。わしも、そば粉やないけんね。」
じじい、うまく言ったつもりでしょうか。




