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石じじいの話  作者: Lefeld
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石じじいの話・血をください

石じじいの話です。


じじいが夜行列車に乗っていたときの話です。

石さがしの旅でした。

夜汽車の客車内は空いていました。

暗闇を走っていると、一人の女性が客車に移動してきました。

その女性は、じじいに向かって真っ直ぐに歩いてきて、じじいの真向かいに座りました。

「ほかにたくさん空席があるのに、どうしてわざわざ、わしのところに座りに来るんやろ?わしに気があるんかな。」

と、じじいがポジティブに考えていると、女性が、低い声で、じじいに話しかけてきました。

「すみません、血をください。」

「へ、へぇ?」と、じじい。

「血をください。私の娘が、血を必要としているのです。」

と、その女性は言いながら、持っていた旅行かばんからガラスのフラスコを取り出しました。

じじいは、状況が飲み込めません。

「少しで良いんです。お願いします。この分量だけで。」と女性。

[いやいや、そのフラスコけっこう大きいが。3合くらいは入るんやないか?]と、じじいは焦りました。

じじいが黙っていると、その女性は、かばんから、さらに金属の小型箱を取り出して、その中から、メスや止血帯のようなものを取り出し始めました。

テキパキとした行動です。

「大丈夫です。わたし看護婦だったんです。」と女性。

[いかん!これは、XXXXや!(現在では使用できない表現)どがいしょ?!刃物もっとるがな!]

じじいは、やっとのことで答えました。

「ああ、いやいや、それは、ここでは無理ですわ。」

「いえ、ここで良いんです。私、慣れていますから。お望みならモルヒネもあります。」と女性。

「娘には血が必要なのです。助けると思って。」女性は片手にフラスコ、片手にメスを持って哀願します。

[いやいや、わしが助からんがな!]

じじい絶対絶命。

「どのような事情で、血を必要とするのですか?血液型の違いということもありましょう。よければ、理由をお聞かせください。」と、じじい。

さすが、もと衛生兵。

すると、その女性は、なにか吹っ切れたように、

「けっこうです。失礼しました!」と、つめたく言い放って別の客車に行ってしまいました。

冷や汗をかいたじじいが警戒して見ていると、その女性は、次の駅で下車して、駅の暗闇に消えていったそうです。

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