石じじいの話・砂漠の骨
石じじいの話です。
じじいが私に残してくれた石や資料があります。
それは、「じじい箱」と呼ばれています。私に。
お盆近くになったので、その箱の中をさぐっていると、骨のようなものが見つかりました。
それは、綿にくるまれて、じじいの手製の厚紙の箱に収められていました。
箱には、「蒙古、コビトの骨」と書かれていました*。
これは、なにか?と思って、関連する話がないかと、「じじいの話聞き取りノート」のなかを探したのですが、これだ、と思われるものを見つけました。
それが、以下の話です。
じじいが満州を旅行したとき、蒙古との国境近くを訪れたことがありました。
その地域には、小さな砂丘がたくさんあったそうですが、そのなかで、他の砂丘とは異なる、砂が赤褐色の砂漠がありました。
そのは、きれいな砂丘の形をしておらず、砂もサラサラではなく、かなり硬く締まっていました。
地元の蒙古人が言うには、これは現在の砂丘ではなく、大昔の砂丘が風によって削られて崩壊してるのだ**、ということでした。
じじいは、その時から石に興味があったので、砂丘の表面を観察してみました。
すると、その砂丘の崩れた斜面に骨が散らばっていたそうです。
それを集めてみると、それはどうも人骨のようでした***。
手足の骨や肋骨、背骨がたくさんあり、さらに、顎の一部や歯も見つかりました。
それらは、一体分かどうか、あるいは二体分以上だったのかは判断できませんでした。
じじいは、かつて衛生兵として訓練を受けたので、人体の骨についての知識があったのです。
しかし、おかしなことがありました。
その骨が異常に小さいのです。肋骨や脚の骨の大きさから推定すると、身長が50cmもないのです。
しかし、同時に見つかった顎の骨や歯のサイズは、体と比較してかなり大きいのです。
頭、すくなくとも顎や歯が不釣り合いに大きい人骨です。
不思議なものだということで、同行していた日本人は、写真を撮影しました。
蒙古人は、地中からものを掘り出すことを非常に嫌うので、それをまた埋め戻すことにしたそうです。
しかし、石好きのじじいは、こっそりと、その骨の一部を持ち帰りました。
持ってきたのは、肋骨や歯の一部、腰骨と思われるものだったそうです。
ついに、それは、じじいにより日本の片田舎まで運ばれたのです。
これ、見たら呪われる:というものではないでしょうね。
まあ、この話を読んだ皆さんも呪われますよ。
ご安心ください。
骨の画像は以下のリンクからどうぞ。
https://i.imgur.com/1QrDT1D.jpeg
骨の大きさは、どれも、2cm程度です。
*「コビト」という表現を、そのまま使用していますが、差別の意図はありません。
**調べてみると、数千年前にできた古い砂丘が、現在の風によって削られている事があるようです。昔の砂丘の砂が、現在の砂丘の原材料になるのでしょうね。
***「化石」と言えるのかもしれません。
蒙古の砂漠の地面には、青銅製の道具や刃物、幾何学模様が描かれたダチョウの卵の破片が見つかる、という話を以前に書いたことがあります。




