石じじいの話・短い話:枝が折れたら;幽霊になりたて;唐揚げの名前
石じじいの話です。
他人から聞いた短い話をいくつか。
(1) ある人が言ったそうです。
「雪が降っている。その雪の重みで木の枝がたわんでいく夢を毎晩見るんだ。
重みで、枝が、だんだんたわんで、もうすぐ折れそうなんだ。
その枝が折れたら、俺は死ぬのではないか?
今は夏だが、そんな夢を毎晩見ているんだ。」
と。
その人が、死んだかどうかはノートに書かれていません。
(2) ある人が言ったそうです。
「去年死んだ、俺の5歳の息子が幽霊になって戻ってくるんだよ。
だいじょうぶ。戸締まりをしていても、息子は家の中に入ってくるんだ。
なにせ、幽霊だからな。
でも、息子が言うには、幽霊になりたてだから、壁をすり抜けるときに、いつも目を閉じてしまうんだと。」
(3) じじいがある人と食事をしたときの話です。
家で飼っていた鶏をしめて、ごちそうしてくれたのです。
その人は、唐揚げに名前をつけて食べていました。
「〇〇(唐揚げの名前)、おつかれさん。」(食べるとき)
「〇〇(唐揚げの名前)、おいしかったよ。」(食べたあと)
じじいが、やんわりと、その理由を尋ねたところ。
「鶏が生きていたときは、名前など、つけてやってはいなかったんだが、死んでからは、やつに敬意を表して名前をつけて呼びかけるんだ。」
と、その人は説明したそうです。




