石じじいの話・死人は巡る
石じじいの話です。
「死人が巡るルート」があったそうです。
じじいが、ある村を訪れたとき、昔、庄屋だったという人がその話をしてくれました。
その人が言うには:
死人が巡廻する。
死人、幽霊というべきか、は、決まったルートを歩いて(脚が無いのに?)、ある家の庭先、ある樹木、ある石垣、ある田んぼの縁、ある河原に立ち寄って、消えていく。
昔から、たくさんの目撃者がいるので、おおよそのルートはわかっている。
そのルートは閉じていない。
つまり出発点と到着点、出現点と消滅点は同じではない。
出現する日時は決まっていて、
上弦の月が沈む深夜0時ごろ出現する。
しかし、例外もあって、
上弦の月がのぼる正午ごろ出現することもある。
その死人は何もしないが、やはり、出会うと気持ちの良いものではない。
おそらく、あんたにも危険は無いだろうが、安全である保証もないので気をつけろよ。
と。
この話を聞いたときは、死人巡廻の日ではなかったので、じじいは、安心したのですが、相手が死人だけに、変則的に出現するのでは?とびくびくものだったそうです。
話を聞いて、じじいは、尋ねました。
なぜ、その死人は、その特定の場所に立ち寄るのか?
- 庄屋が答えて、
- おそらく、その死人は、その場所に執着があるのだろう。
どんな執着か?:じじい
- わからない。死人に聞いてみるか?(いやいや):庄屋
その死人は、そもそも誰だ?:じじい
- どこの誰かはわかっている。女性だ。その女性は高齢で亡くなったのだが、現れるときは、若いときの姿だ。なかなかの美人だ。:庄屋
じじいは、その女性の人生をさぐれば「巡廻」の理由もわかり、供養(?)のしようもあるのでは?と思いましたが、そこまで他人に干渉することもないだろうと、その地をあとにしました。




