石じじいの話・天使の死体(ロシア)
石じじいの話です。
知り合いのロシア人が朝鮮で話してくれたものです。
「天使の死体」が目撃されたことがあるそうです。
ある長雨のあと、農民が、森の中で大きな「白い鳥」の死骸を見つけました。
白鳥かとも思って近づくと、とじられた大きな白い翼の下に、人の体があったのです。
それは、一糸まとわぬ全裸の少女の死体でした。*
短い真っ黒な髪が雨に濡れて乱れていました。
彼女の白い羽は雨に濡れて泥で汚れていました。
黒い髪と白い羽根のコントラストがあざやかだったそうです。
その農民は、その死体には手を触れず、いそぎ村に戻って、何人かの村人を連れてきました。
村人たちは、恐れて、その死体に触ろうとしません。
男たちにうながされた一人の婦人が勇気を出して、その少女の死体を抱き起こしました。
翼があるように見えるが、実際は、人間の死体かもしれないので、そのまま放ってはおけません。
翼は、少女の背中からはえていました。
裸なので、それがはっきりとわかります。
少女は、かなりの美人で、目を閉じて、おだやかな表情だったそうです。
目を開かせてみると、虹彩はすでに白く濁っていました。
歯は、真っ白です。
体毛は無く、12-3歳の少女のからだでした。
ロシア人ではなく、「ダゲスタン人」のように見えたそうです。
つまり、コーカサスの民族のようだったと。
森にはたくさんの獣がいるのに、それらに食い荒らされなかったのは、やはり、彼女が神聖なものだったからだろうと、村人たちは深く感じ入ったそうです。
村人たちは、官憲に知られると厄介だということで、森の中で、彼女を埋葬しました。
また、彼女の死体が陵辱されるのを恐れたのです。
小川の近くの、丘の上に小さな塚を築いて、少女をねんごろに葬りました。
その後、その塚と周辺は、村人によって神聖な場所として大事に整備、維持されたそうです。
場所は、ウラジカフカス近くだったということです。
*「白い翼を持つ少女の天使」ちょっと、現代的なステレオタイプのような気がします。
天使には、性別はなかったような?




