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石じじいの話・短い話:自分の中の鬼;最後の風景;産む予定のない子どもの名前
石じじいの話です。
短い話をいくつか。
いずれも、他人がじじいに話したものです。
(1) 友人がじじいに言ったそうです。
「自分が歳をとるごとに、自分の中の『鬼』も衰えてきている。さて、私が死ぬまえに、鬼が死ぬか。それとも、鬼といっしょに私は死ぬのか。」
「しかし、もし、自分が、鬼よりも先に死んでしまったらどうしよう。」
と。
(2) じじいが、友人と、石さがしに高い山に登りました。
頂上付近からの光景は絶景でした。
海の向こうの陸地が見えます。*
そのとき、友人が嘆息しながら、じじいに言ったそうです。
「ああ、今死んだら、この美しい景色が最期に見た風景になるのだが。惜しいことだ。」
と。
(3) 友人がじじいに言ったそうです。
「自分の娘は、産む予定のない子どもの名前を一生懸命考えているんだ。娘は独身だし、つき合ってる相手もいないのに。」
と。
じじいは、『いくら自分の娘だからといって、大きなお世話だろう。』と思いました。
それからしばらくして、その女性は発狂したそうです。
*日本列島を構成する5つの島のなかの一つです。




