石じじいの話・短い話:霊園のファンファーレ;赤い紙;笑う運転士;卵の陰
石じじいの話です。
短い話です。
(1) じじいが、大きな霊園を歩いていると、急に、トランペットでファンファーレが響き渡りました。
なにか!と思って、まわりを見渡してみると、ある墓に人が集まっています。
それは、納骨式でした。
じじいにとって、そのファンファーレは、はじめて聞く曲でした。
それに誘われるように、その墓に近づくと、参列者のひとりが手招きをします。
その人が、じじいに低い声で言ったそうです。
「この曲は、この死んだ無名の作曲家が作ったのです。
いま、ただ一度だけ鳴らされたのですよ。」
(2) じじいが、石探しのための旅で、ある小さな町に立ち寄ったときです。
町の通りに、玄関に赤い紙がはられている家がたくさんあったそうです。
(3) じじいが、旅先で夜のバスに乗ったとき。
バスの運転士が、ニコニコ破顔しながら運転していたそうです。
(4) じじいが、ある人の家を訪れたとき。
ビールを出そうとして冷蔵庫を開けた、その人が、じじいをよびました。
開いた冷蔵庫の中を指差して、じじいに覗いてみろと言います。
「冷蔵庫の中に霊がいるんだ。ほら、その卵の陰だよ。」
霊はいませんでした。
じじいが、気を取り直して「開けて大丈夫か?外に出てこないのか?」と尋ねると。
その人は、「出てこない。温度が高いところには出られないんだろう。出てきてほしいんだが・・・。」




