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石じじいの話  作者: Lefeld
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石じじいの話・鴨緑江の人魚(朝鮮)

石じじいの話です。


じじいの話には、人魚がよく出てきます。

人魚好きだったのでしょうか?

オホーツク海の人魚の話は、いくつかありましたが、今回は朝鮮です。

しかも、海ではなく、淡水の人魚です。

平壌で知りあった朝鮮人が、鴨緑江の人魚について教えてくれました。

その朝鮮人の男性は、朝鮮の東北部の出身の知的な人物で、ロシア語が堪能だったそうです。

ロシアとの国境近くの朝鮮人は、昔からロシアとの交流を持つものが多く、ロシア語の学習も行われていて、ロシア語を話すものも少なくなかったのです。

彼によると、鴨緑江には「人魚」がいると。

それは、非常に大きな生物で、牛のような声を発するというのです。

よく目撃されるが、人に害をすることはない。

たいていは、単独行動をしているのだが、ときには、群れをなして泳いでいるのが目撃されることもあると。

昔はたくさんいたが、日本によって併合されて年月のたった今では、個体数は減っているようだと。

その後、仕事で鴨緑江を訪れたとき、じじいは、地元の漁師に人魚についてたずねました。

日本人のじじいが、人魚のことを知っていることに地元の漁師たちは驚き、最初は警戒したのですが、じじいの性格と非常に流暢な朝鮮語に安心したのか、話してくれたそうです。

彼らによると:

たしかに、「人魚」と呼んでよいものがいる。

魚と人との「あいのこ(ママ)」だ。

それは、とても大きな生き物で、昔からいる。

下半身が魚であり、上半身は人だ。

それらは、人のような、ウマのような、甲高い声を発する。

たくさんいるようで、漁師による目撃例は多い。

まれに、漁船と衝突することがある。

その時は、必ず水面に浮上して、なにか、悲しそうな声を発してから、ふたたび水に潜る。

まるで、衝突したことについて、我々に謝罪しているようだ。

あるいは、我々を批難しているのかもしれない。

その顔はまるで人だが、吻部(鼻から口先の部分)が、普通の人よりも、かなり長い。

眼は、大きくてくりくりしている。

髪の毛や体毛はない。

上半身「も」、裸なのだが、鱗のない胸に、「入墨」のようなものをしている個体もいる。

無いものもいるが。

それは、文字のようでもあり、紋章のようでもあり。


じじいは、その後、船で対岸に渡ったのですが、夕暮れどきに河を行く小舟から、向かっている対岸の風景を眺めていると、夕日に照らされた川面に、腕のようなものが二本出ていて手を振っているのが見えたそうです。

逆光で見づらかったのですが、やはり「人間の腕」のようだったといいます。

それを指差して、船頭にこのことを伝えると、船頭は、「うん、うん」と首をふりながら、にこにこと笑っていたそうです。

船からおりるとき、その船頭は、「運が良かったな。良いことがあるぞ。」とほほえみながら言いました。

今まで、どんな良いことが起きたのか、じじいはわからないそうです。

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