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石じじいの話・雨上がりの庭
石じじいの話です。
これも、じじいが子供の頃の話です。
じじいは、寺の裏山に友だちと遊びに行きました。
きれいに掃き清められた、寺の広い庭は、午前中まで降っていた雨上がりでぬかるんでいました。
そのようなときには、他人の庭に足跡をつけないように端を歩きなさい、と、じじいは親にしつけられていたそうです。
端を通りながら見ると、庭の真ん中に、人がたくさん立っていました。
喪服ではないので、葬式ではないのでしょう。
むしろ、晴れ着姿のようでした。
しかし、庭には、立っている場所への足跡がまったくなかったそうです。




