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石じじいの話・短い話:顔が降る;鶏復活;立派な亡骸;人生の目標
石じじいの話です。
じじいが、他人から聞いた話だそうです。
(1) ある人が言いました。
「雨が降ってくる鉛色の空を見上げていると、恋人の顔が降ってきた。」
おもわず抱きとめようとしたら、地面の泥に足を滑らせて、すっころんだそうです。
「しかしな、そのあと、その娘と結婚できたんだよ。」
(2) ある人が言いました。
「絞め殺した鶏の羽をむしっていると、急に生きかえって暴れはじめて、おどろいたよ。確実に殺したはずなのに。」
「そのときに見た鶏の目を一生わすれることができないな。」
(3) ある人が言いました。
戦争中、男の子が生まれたとき、赤ん坊を見て母親が言ったそうです。
「この子は、太い骨格を持っている。これは、立派な亡骸になるでしょうね。」
(4) ある人が言いました。
「殺したいやつがいると、目標のある人生が送れるんだよ。」




