石じじいの話・黄金の塔(ロシア、朝鮮)
石じじいの話です。
知り合いのロシア人が話してくれたそうです。
そのロシア人が、ロシアとカザフスタン(当時は、ロシアの保護領?)との国境近くを訪れたとき、土漠に、骸骨があたり一面に散らばり、場所によっては積み上がっている場所があったそうです。
おそるおそる近づくと、骨が散らばるむこうに、金色に輝く塔がそびえています。
その高さは、3〜4メートルはありました。
たしかに、「黄金の塔」です。
ここを訪れる前、地元の人が、この塔のことを話してくれました。
地元の人が曰く:
「いいか、あの塔にはぜったい近づくな。遠くから見ているぶんにはいいが。」
「あの死の塔に近づいたものは、みんな死ぬのだ。」
地元の人たちによると:
その塔に、ある距離まで近づくと、生き物はみな死ぬ。
人はもちろん、家畜も、野生動物も死ぬ。
空を飛ぶものも死ぬ。鳥が落ちて死んでいる。
塔のまわりにちらばる死体を食べようとしてやってきた鳥も死ぬ。
だから、その塔のまわりには、それをとりまくように円形に死体が散らばっている。
場所によっては、骸骨が積み重なっている。
骨の野の中心にそびえる「塔」は、どうもほんとうの黄金でできているらしい。
しかし、だれもそれに触れたり、一部でも欠き取ってきたものもいない。
たまに、黄金のうわさを聞いた人間たちが欲にかられてやって来るのだが、彼らも必ず死ぬ。
死体を片付けようとしても、近づくと私たちも死ぬのでそれもできない。
だから、すべての生き物の骸骨が、そこに散らばっているのだ。
その黄金の塔は、大昔からあるようで、まわりに散らばっている骨の中には、かなり風化して、ぼろぼろになって、飛砂に埋もれているものも多い。
大昔に、ある蒙古の将軍が軍隊を派遣したようだが、近づく兵士は全部死んだ。
刀を振りかざして特攻しても、すぐ死んだ。
そのときから長い年月の間、塔のまわりには、鎧を身につけた骸骨がうず高くつみあがっていたという。
死体が身につけていた鎧も刀も、いまではほとんど風化して砂に埋もれてしまった。
その将軍は、恐れて逃げ帰ったそうだ。
この話を聞いたロシア人が、そこを訪れてみると、遠くに「黄金の塔」が太陽の光をあびてキラキラと輝いていました。
まわりの大地は、赤褐色の粘土で(土漠)、そこに真っ白な骨が円形に散らばっています。
ところどころに、黄色い飛砂の小さな砂丘ができていました。
とても美しい風景で、いつまでもうっとりと眺めていたと。
じじいは、この話を聞いたとき、「殺生石」のようだなと思ったそうです。




