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石じじいの話・よくできたお面
石じじいの話です。
小学生が、夏休みの宿題に、父親のお面を作りました。
その子は、新聞紙とのりを使って紙粘土を自作して、それに白の絵の具を塗り、そこに父親の顔を描いたのです。
その子は、工作好きで絵が上手だったので、父親にそっくりの面が出来上がりました。
それを座敷に飾っておいたところ、お盆に施餓鬼のためにやってきた、寺の住職がその面を見て。
「おお、これはなかなか良いできじゃ!この子は、将来げーじつ家になったらええわい。しかし、これは、ちょっと・・・。」
口ごもる住職に、家人がたずねると。
「いや、なんでもないが、ちょっと、『暗い』感じやな。色の具合かのう。」と。
その後、夏休みの最終日、その父親は急死しました。
心臓麻痺だったとか。
彼の葬式のとき、住職が、
「あのときは言わんかったが、あの面にはな、死相が浮かんどったんよ。いや、わしのような坊主が、死相などというものを占うのは笑止じゃがな。」
と、誰にともなく言ったとか、言わなかったとか。




