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石じじいの話・短い話:病床のたのしみ;妹の日記;今年は必ず;情念は燃えない
石じじいの話です。
いずれも、じじいが他人から聞いた短い話です。
(1) じじいは、病気で長い間入院している知人を見舞いました。
そのとき、その人が言うには、
「ずっと病床に伏しているとな、ハエを殺すのがたのしみなんだよ。」
(2) これは、じじいが子供の頃、学校の同級生の女の子から聞いた話だそうです。
ある日、その友人が二階の部屋で、こっそりと妹の日記を盗み読んでいると、暗い廊下をを降りていく足音がしたそうです。
(3) 旧家の、じじいの知人が言いました。
「この数十年間、私の家系には、不幸が起きていないんだよ。今年は、だれか死ぬだろうな・・・。」
(4) じじいが、知人女性の葬儀に参列しました。
火葬場の外で、参列した友人・知人たちが、火葬が終わるのを待っていると、彼女を焼いた煙が、まっすぐに立ちのぼっていました。
参列者の一人が、その一筋の煙を見ながら言ったそうです。
「でも、あの女の情念は燃えないでしょうね。」




