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石じじいの話  作者: Lefeld
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石じじいの話・文字の化石

石じじいの話です。


「文字の化石」があったそうです。

化石とは、太古の生物の生活の痕跡というのが定義らしいのです。

そのため、何万年も前の岩石のなかに保存されている足跡や巣穴も化石だとか。

ある奇石コレクターが、「『文字の化石』があるから見に来ないか」と、じじいに手紙を書いてきたそうです。

じじいは、何をおかしなことを言ってるんだ。そんなものあるはずないじゃないか。脳が湧いてるんじゃないか?

と思ったのですが、おもしろそうなので、わざわざ、汽車に乗って一日がかりで見に行きました。

その「化石」を見て、じじいは驚愕しました。

まさに、文字の化石だったのです。

その化石を含む岩石は、赤色の砂岩でした。その砂粒は非常に細かかったそうです。

岩石の表面の一部に、文字がレリーフ状に浮き出ていて、それは岩石の中に続いているように見えました。

その文字は漢字で「可・不・・・・」と読めました*。

文字の上を覆っていると思われる部分を取り除くと、この続きが読めるのではないかと、所有者は考えていました。

じじいも同意見でした。

じじいは、化石のまわりの岩石を、化石を壊さないように取りのぞき、化石だけをきれいにとりだす**のに長けていたので、その作業をしてみることにしました。

釘や千枚通しなどを焼きなましして、砥石で先を様々な形に研いで焼入れして、それをハンマーで叩いて岩石を少しずつ取り除いていくのです。

文字はありました、つづいて出てきた文字は「見」でした。あるいは、「目」かもしれませんでした。

文字の保存状態が悪かったから、判読が難しかったようです。

さらに、作業を続けると、「生」、「上」。

じじいは、これは全部読むと何か悪いことが起きるのでは、と不安になりました。

しかし、今さら後にはひけないので、作業を続けると、「口」。

この口という文字は、他の文字よりもかなり小さかったそうです。

ここで文字列は途切れました。

途切れたというより、そこで岩石の一方の端まで達してしまったのです。

じじいは、がっかりしたと同時にほっとしました。

所有者は大変喜んで、同好の士にも見せて自慢するのだ、と息巻いていたそうです。

じじいは、その文字列の拓本をとらせてもらったそうなのですが、それは、私の手元には残っていません。

話をしてくれた当時、それを見せてくれた記憶もありません。


「・・可・不・見・生・上・口・・」***

意味不明の文字列です。

*以前に、枯れ木の幹を縦に割ったら、その断面に文字があった、という話を書いたと記憶しています。

**日本では、その作業をクリーニングと呼ぶようです。化石の洗濯?

***「文字の化石」とは何でしょうか?なにかに書かれた文字が化石になったのでしょうか?

しかし、文字は刻み込まれていたのではなく、レリーフのように飛び出ていたのです。

まさか、発せられた声が化石になったわけではないでしょうが。

その場合は、「言葉の化石」と言えるのかもしれません。

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