石じじいの話・短い話:潰れた弁当;地下室の階段
石じじいの話です。
短い話を2つ。
(1) じじいが山道を歩いていると、潰れた折り詰め弁当が道路に散らばっていました。
中身のご飯が折り詰めから飛び出して散らばっています。
巻き寿司でした。
近くには、水筒もころがっていました。
花の模様がついた、アルマイト製の小さな水筒です。
そして、ひどく破れた小さな青いリュックサックも。
そこから、前方に、何人かの人が道路の真ん中に集まっています。
道端には、トラックが停まっています。
交通事故です。
小さな女の子が道に倒れています。
まったく動きません。
顔には、真っ赤な布がかけられています。
それを見た、じじいは、とても悲しくなって、いま来た道を振り返りました。
破れた青いリュックサックの布が、風に吹かれてひらひらゆれていたそうです。
(2) 地下室のある家がありました。
その地下室は、硬い岩盤をくり抜いて作られていて、そのあたりの地層の断面を見ることができました。
地層の断面を見るために、じじいは、その地下室に入れてもらいました。
わりと深い地下室で天井までは、かなりの高さでした。
どうやって、こんな大きな空間を掘ったのだろうと、じじいは思ったそうです。
地下室の壁には、雨で風化していない新鮮な地層(岩石)が露出していたので、じじいは、地層を調べて、岩石のサンプルも採取することができました。
大満足です。
地層を見ているときに、じじいは、もう一つ出入り口の階段があることに気づきました。
いま、地下室に降りてきた階段の対面に、それはありました。
じじいが、その階段を見ているのに気づいた、その家の主人が言いました。
「この階段を使ってはいけないよ。この階段はのぼってものぼっても地上にはつかないのだから。」




