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石じじいの話・短い話:後ろに潜む死;母親の遺産;大股で歩く;死ぬ前に電話
石じじいの話です。
短い話をいくつか。
(1) ある人がじじいに言ったそうです。
「最近、妻が病気で死んだんだ。その死を悼む自分の後ろにも死が潜んでいるのだよ。」
(2) ある女性がじじいに言ったそうです。
「死んだ私の母親には遺産がなかったんですが、子供の私に唯一遺したのは「死」なのです。私は、それを相続したのです。」
その女性の母親の死の原因となった病は、彼女にも遺伝していました。
(3) ある人がじじいに言ったそうです。
「そうか、あなたは山をよく歩くのか。山道を大股で歩く者は、鬼かもしれないから気をつけろ。」
(4) ある人がじじいに言ったそうです。
その人が、友人の部屋を訪れてみると、「死ぬ前に電話すること」というメモが、友人の机の上に残されていました。
その友人は、前の日に、心臓麻痺で*死んでいたのです。
*「心臓麻痺」は、昔よく使われた言葉で、現代では「急性心臓死」と呼ばれている突然死でしょう。




