石じじいの話・短い話:魚屋;花畑;草むしり;脳という漢字;後ろ向きに歩く;波の音
石じじいの話です。
じじいが、日本で他人から聞いた話です。
(1) ある人が言うには:
「町を歩いてるとな、頭だけを売っている魚屋があったんだよ。そこは、立派な店でな、魚が入っているガラスの保冷ショーケースの中には、氷がたくさんもられていたよ。魚はぜんぶ頭だけだったけどな。」*
(2) ある人が言うには:
「私は園芸をやっているんですが、ある夜中に窓を開けると、そこは一面の花畑で、そこを幽霊たちが通っていたんです。」
(3) ある人が言うには:
その村で、母親を殺した男性が、その犯行の後に、ずっと庭の草むしりをしていたそうです。
(4) ある人が言うには:
「脳の文字をよく見てみろ。凶という字が含まれているだろう。こわいだろう。おれの頭はおかしくなりそうだ。わるいことがおきるぞ。」
(5) ある人が言うには:
「後ろ向きに歩いてくるのは死人だ。」**
(6) じじいの友人の漁師が言ったそうです。
「浜に打ち寄せる波の音を、くりかえし、くりかえし聴いていると、海の底から呼ばれているような気がするよ。」
あとがき:
*じじいの、他の話に、「魚屋で売られている魚のすべてが、目をくり抜かれていた」というのがありました。
**これは、現代でも似た怪談話がありますね。手の甲で拍手をする死人とか。




