石じじいの話・短い話:首吊り用の縄;大八車の死体;死人を殺す;白い犬を連れて(一部、朝鮮)
石じじいの話です。
短い話をいくつか。
日本での経験と朝鮮でのそれとが混じっています。
(1) じじいが、旅先で知り合った男性の家に訪れたとき。
そこは、蔵がある、大きな農家でした。
蔵の白壁に古い錆びた釘が打ってあって、そこに古い太い縄がかけられていました。
ぼろぼろになっていました。
その知人が言いました。
「いつでも首が吊れるように、こうやって用意しているんだ。しかし、もう20年もこのままだよ。」
と。
(2) 朝鮮での話です。
じじいが田舎道を歩いていると、むこうから、死体が大八車に載せられて運ばれてきました。
それが行き過ぎたとき、じじいは振り返って見てみました。
死体には、白い布がかけられていましたが、両足が布から出ていました。
それが大八車の振動で、ゆらゆらと左右に揺れていて、だんだん脚が開いていていっているところでした。
じじいが見ていると、急に、ぐっと両足が動いて脚を閉じたそうです。
女性の死体でした。
(3) 知り合った朝鮮人が言うには、「ある人の死は、その人の中にすんでいる死人を殺すことになるのだ。」
と。
これは、映画『どですかでん』での、自殺願望者を思いとどまらせるための説得の理屈のようです。
(4) 日本での話です。
じじいの知り合いが言うには、彼は、霜の降る冬の朝、近くの森に白い犬を連れて死者を訪ねるのだ、と。




