石じじいの話・海の放送
石じじいの話です。
これは、じじいが石探しのために北海道を訪れたときに、現地の人から聞いた話です。
北海道の港町からは、たくさんの遠洋漁業船が出ていました。
船員を乗せるために、大きな船が小さな港の沖合にやってくると、その漁村の漁師たちが、艀を使って船までむかうのです。
漁師たちの出発の日には、港で村人総出で見送ったそうです。
その船員だった漁師がしてくれた話です。
漁業無線を傍受していると、たまに、不思議な電波を受信することがあったそうです。
音声電波なのですが、何語かわからない。
すくなくとも、英語や中国語、朝鮮語、ロシア語ではなかったそうです。
漁船には、そのような言語の識別ができる通信員が勤務していたのです。
その電波からは、男性や女性のモノローグが延々と続いたり、連続した叫び声などが聞こえてきたそうです。
通信とは思えませんでした。コールサインも発信しないし。
決まった時刻に始まり、決まった時刻に終了するので、この電波は、放送であると思われましたが、何語かわからないので判断しようがありません。
ステーションジングルのようなものもないし、時刻アナウンス、ニュース番組などもないようなのです。
発音の調子からすると、数字列の読み上げのようにも聞こえないので、暗号放送でもないだろうと。
しかし、「番組」のようなものがあるらしく、「放送」スケジュール(番組放送予定)があるらしい。
周波数は、1つだけで、他の周波数では「放送」されていませんでした。
これは、受信してもどうしようもなかったので、長時間聴きとることはなかったそうです。
それに、それを長時間聴くと、体調が悪くなるぞ、という話もありました。
確かにそういうことはあるのですが、確実な因果関係は不明でした。
その「放送」は、SSB(単側波帯)でのものだったので、音質が非常に悪く、そのために、そのような変な感じに聞こえたのではないか、という意見もあったそうです。
しかし、もし、それが放送ならば、SSBで送信されるのは解せない。
その人は、ロシア(当時はソ連)の漁民と話をする機会があり、情報交換をしたときに、その「放送」について触れました。
すると、ロシア人たちも、その不思議な「放送」を知っていたそうです。
彼らも、それがどこから送信されるのかわからなかったようです。
少なくとも、ソ連の放送ではないだろうと。
ある高齢のロシア人が言うには、
「あの電波は、『海からの放送』なんだよ。海の中から流れているんだ。おそらく、我々地上の人間に、海の中に住んでいる者たちが、なにかを伝えようとしているんだろうな。解読できれば、我々地上人にも役立つだろうに・・・。」
しかし、海水中を短波は伝搬しない、と若いロシア人たちが、その反駁したそうです。
あるいは、「海、それじたい」が、放送しているのはないか、という意見もありました。
じじいからこの話を聞いてから、1年ほどたったとき、短波ラジオを買ってもらって、その放送を受信しようとしましたが、できませんでした。
中国や韓国、北朝鮮、ロシアからの放送は強力に受信できましたが。
意味不明の放送で有名なのは、ロシアから送信されているUVB-76がありますね。




