石じじいの話・106番
石じじいの話です。
死人から電話がかかって来ることがあったそうです。
昔の田舎の電話は、交換手が声で呼び出す、というものでした。
電話機に大きなスピーカーがついていて、交換手が直接「106番、106番」と声で呼び出して来ます。
そうすると、電話番号106番の人は、受話器をとって、それに応答するのです。
「106番、106番」
夜中に、ある老婆のところに、死んだ旦那さんからかかってきていました。
それは紛れもなく、昔に死んだ夫の声でした。
いろいろと昔話をするのですが、内容は、他人が知っているようなものではないので、本当に夫のようであったと。
一週間に1〜2回の頻度でかかってきました。夜中に。
「106番、106番」
その女性も、最初は懐かしくて話していましたが、話題もなくなってくるし、ちょっと気味が悪いので、もてあましはじめました。
ある夜、電話に出ないでいました。
「106番、106番」・・・「106番、106番」・・・「106番、106番」
交換手の声が繰りかえされます。
我慢できずに、電話にでました。
そして、交換手にたずねたのです。
どうして、延々と呼び出すのか?しかも、こんな夜中に。
交換手は訝しげに言いました。
「いや、まだ1回しか呼び出していませんよ。」
こんど、その人から電話がかかってきたら、交換台のほうで断ってくれ。
今風に言えば、着信拒否です。
それはできない、と断られたそうです。*
老婆は、まわりの知人たちに相談しました。
とんちのきいた人もいたもんで、「こんど電話がかかってきたら、『じいちゃん帰ってきてや』とゆうてみんさいや」と、ふざけた助言したものもあったそうです。
もし、本当に帰ってきたらどうするんだ、ということですが。
しかし、老婆は、それを実行したのだそうです。
「106番、106番」
彼女が、帰って来てくれと伝えたところ、それはできないので、あなたがこっちに来てくれ、と夫は答えたそうです。
案の定というか。
それで、彼女は非常に恐怖したのです。
警察に相談しましたが、警察は、そんなもんは、いたずら電話やろうから、まあ、がまんしんさいや、という対応です。
そうこうしているうちに、その老婆は亡くなってしまったのです。
案の定というか。
老婆のお通夜のとき、その家の電話が鳴りました。
「106番、106番」
普通の電話だろうと、なにげなく親戚の人がとると、「ごほん、ごほん、ごほん」と咳の声がして電話は切れたそうです。
「ああ、そうだった。おじいいさんは、結核で亡くなったんだったな。」
*そのような「サービス」が当時あったのかどうか不明です。
これは、ありがちな話です。
いわゆる、「死人からの電話」というものですね。




