石じじいの話・短い話:暗闇からやってくる;仏壇の中;心では呪う
石じじいの話です。
短い話をいくつか。
すべて、じじいが人から聞いた話のようです。
(1) ある女の子が、いつも両親に、「弟が欲しい、弟が欲しい」と言っていました。
しつこいくらいに。
ある夜、その女の子が、両親と夜道を歩いていました。
お祭りからの帰りでした。
お祭りで、弟といっしょに参加していた友だちに出会ったせいなのか、その帰宅の道中でも、「弟が欲しい、弟が欲しい」と、女の子は呪文のように両親に言っていました。
そう言いながら歩いていると、暗闇の向こうから小さな子どもがやって来たそうです。
田舎の夜道は街灯もなくまっくらです。
その子は、彼女たちに近づきながら「おねえちゃん」と呼びかけてきたそうです。
(2) ある人が言うには、仏壇の中では、亡者が待っているのだそうです。
仏壇のなかで、家人が死ぬのを待っているのだと。
(3) ある結婚式の披露宴で、じじいの隣の老人が、向かいに座っている若い女性を見やって、じじいに言いました*。
「ほれ、見てみんさい。あのおなごは、口では祝いよるが、心では呪うとるんで。」**
あとがき:
*当時の披露宴は、畳座敷に座って、お膳でごちそうを食べていました。
**これは、「祝」と「呪」の漢字が似ているが意味は正反対、ということから思いつかれた話のようです。
その老人が、うまいこと言ったのか?
じじいが、うまいこと言ったのか?




