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石じじいの話  作者: Lefeld
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石じじいの話・匂い

石じじいの話です。


魂の匂いをかぐことができる女性がいたそうです。

その人によると、死体は匂わない。

赤ん坊から老人まで、すべての人間が匂うし、その匂いに違いはないのだ。

とうぜん、死体は匂わない。

この匂いは特別のもので、体臭や死臭とはまったく異なるのだ。

それは、甘い、チョコレートの匂いに近いということでした。


ある時、その女性が、菊人形を見た時に、これから強烈な魂の匂いがする!と言ったそうです。

それは菊の花の匂いではないか、と尋ねても、まったくちがう匂いだということでした。

「犬神家の一族」?


匂いといえば、じじいの本業の石:

匂いを発する石があったそうです。

それは、いつも匂うのではなく、冬の、とても寒い日に匂ったのです。

生き物が焦げるような匂いだったそうです。

岩石に含まれている硫黄などの物質の臭いではなかったといいます。


匂いといえば、まったく匂いのしない家があったそうです。

ふつう、家の中に入ると、その家の何かしらの匂いがするものです。

たとえ、人のすまない家でも、カビやホコリの臭いがするものです。

その家は、入ると、まったく匂いがしなかったそうです。

人は住んでいたのですが、その生活臭が無い。

住んでいる人に尋ねても、彼らには臭いがある:と言うのです。

その家の縁側のガラス戸を開けて、外気を吸っても匂わない。

庭には蝋梅が咲いているというのに。

そういえば、家に近づいたときに、すでに臭いがしなかったように思う。

じじいは、自分の鼻がおかしくなったのではないかと不安になったそうです。

じじいが、その家を出て、彼の8000円の車*に近づいた時、急に世界の匂いが押し寄せてきました。

頭がクラクラしたそうです。

*「8000円の車」とは、じじいが晩年に購入した小型ボンネットトラックです。

中古で、当時の価格が8000円。助手席の床が錆びて穴が空いていて、走るとそこから路面の小石がバンバン入ってくるという代物でした。当時は、道路が舗装されていませんでしたからね。

よく乗せてもらいましたが、いくら石を集めているからといって、車の中にまで石が入り込んでくるのはいかがなものか、と子供ごころに呆れたものです。

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