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石じじいの話・踏切で傘をさすな
石じじいの話です。
傘をさして渡ると、必ず列車に轢かれそうになるという踏切があったそうです。
じっさいに、轢かれた人もいたとか。
田んぼの中の、遮断器もない、踏切でした。
この話を聞いた時、じじいは、「それはありますまい!」と思ったそうです。
そんな田んぼの中の見通しのいい静かな田舎の踏切で、近づいてくる汽車に気がつかないはずはないだろう、と。
じじいは、その踏切を通ってみたそうです。
この話を聞いたときに、好都合なことに雨の日だったからです。
なんの変哲もない踏切でした。
しかし、見ていると、たまに通る人が、みな傘をとじるのです。
踏切を渡りきると、傘を開く。
見かけた三人とも、おなじように傘をとじて通ったのです。
じじいは、ためしてみようと思いました。
傘をさしたまま、その踏切を渡るのです。
傘をさしたまま、踏切に近づいた時、轟音をあげて汽車が通り過ぎました。
「その怪異を確かめるのだ!」ということに気をとられてしまって、汽車の接近に気がつかなかったのでしょう。
それでも、音はするはずです。
じじいは、ちょっとしょんべんをちびったそうです。




