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石じじいの話  作者: Lefeld
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石じじいの話・じじいの見た夢

石じじいの話です。


みなさんは、どんな夢を見ますか。

私の場合は、昔の思い出が混じりあった夢がほとんどで、予知夢を見ることはありません。


ある夜、じじいは夢をみました。

こんな夢です。


・朝鮮に住んでいたときに親しくつきあっていた日本人家族のご主人が、じじいに話します。

「引き揚げの時、歩いて釜山の近くまできたときは安心したよ・・・。」


・朝鮮に住んでいたときにお世話になった、食堂を経営する朝鮮人のおばさんが、じじいに話します。

「赤狗が攻めてきた時、逃げようと思ってもソウルの川を渡れなくてさ。どうしようもないから、川岸の砂浜に穴をほって隠れたんだよ・・・。」


・朝鮮の地方都市の知り合いの日本人家族の女の子が、じじいに話します。

「私は、引き揚げのとき、親に捨てられたの。でも、朝鮮人の農家の人に拾われた。その人たちは優しくしてくれたけど、わたし、風邪をひいてしまって高熱をだして大変だったの・・・。」


・日本海に面した町で知りあった日本人家族の奥さんが、じじいに話します。

「私たちは、こどもを置き去りにしてしまったんです。海からのぼるお日様は、私たちを責めるようでした・・・。」


・満州を旅したときに、なにかと世話をしてくれた日本人の若い軍人が、じじいに話します。

「満州では、ロシア兵が攻めてきてたいへんだった。みんなでいっしょに逃げたよ、トラックに乗ってね。でも、開拓団の人たちを見捨てたのは情けなかった・・・。」


・満蒙を旅したときに、現地で案内してくれたモンゴル人が、じじいに話します。

「その年の冬は寒かった。雪がたくさんふって、たくさん家畜が死んでな。俺の子供も妻も死んだ。遠くの村に助けを求めて、一人でタル*を歩いてなあ・・・。」


・朝鮮で知りあったロシア人が、じじいに話します。

「アメリカに移住しようと思ったが、祖国のロシアが懐かしくてね。一度モスクワを見てからアメリカにいこうと思ってソ連に帰ったよ。何日もかかって鉄道でクラスノヤルスクについたときは、うれしかったね・・・。」


・朝鮮に残してきた朝鮮人の女性が、じじいに話します。

「暑い夜で、わたしの身体も熱かったの。でも、すぐに涼しくなったわ。冷たいほど・・・。



「ああ、あの人たちは、みんな死んでしまったのだな。」

目覚めた、じじいは、そう思ったそうです。

古い柱時計が三時をうちました。

*「タル」とは、モンゴル語で、草原という意味だそうです。

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