282/619
石じじいの話・竹やぶの怪
石じじいの話です。
竹やぶは、怪異の舞台となることが多いように思います。
どうしてでしょうか?
ある農村では、竹やぶがあちこちにありました。
特に、ふたつの大きな竹やぶが、川をへだててありました。
雨のあとには、その両方の竹林から、互いに呼びかう声が聞こえたそうです。
女の声でした。
それは、魔物の声だということでした。
じじいは、その端の道を通って、山に入ったのですが、なにもないきれいな竹林だったそうです。
また、村人が言うに、冬の寒い日には、その藪の中で「幽霊の匂い」がすると。
じじいが、「幽霊の匂い」とは、どういうものか?と村人に尋ねたのですが、彼曰く:
「まあ、かいでみんさい。すぐわかるけん。」
じじいには、それを嗅ぐ機会はなかったそうです。




