石じじいの話・短い話:白い鬼;無念の雪;人魚の尾をつかむ
石じじいの話です。
聞き取りノートから、話の断片のようなものをいくつか。
(1) ある人が、じじいに言うには:
鬼には、色がある。
赤、青、緑、黒い鬼などだ。
しかし、白い鬼がもっとも怖いのだよ。
と。
(2) 寒い冬の日。ぼたん雪が降りしきるなか、寺の墓へ続く道を、一人の男性がやってきたのに会いました。
近くには見かけない人だったのですが、じじは声をかけました。
「いやいや、雪がふりますのう。これでは、すぐに積もりますわい。」
普通の挨拶です。
その人が言いました。
「死者の無念が雪になるのです。」
(3) これは、東北地方の日本海側の漁港での話です。
そこで、「人魚の尾をつかんだ」ことのある漁師にあったそうです。
網にかかった人魚を船に引き上げようとして、その尾をつかみました。
片手でつかめるような大きさだったそうです。
こぶりなマグロ程度の大きさです。
その人魚は、尾をつかまれたとき、片手を、じゃんけんのときの「パー」のように広げて腕を真っ直ぐにその人に向けて押し出しました。
その時、その漁師は、顔に鋭い痛みを感じて、つかんでいる手を離してしまったそうです。
何かを顔に浴びたのかもしれません。
その人魚の姿は:
上半身の肌の色は浅黒く、下半身には鱗がない。
髪の毛はあったようだが、性別はわからなかった。
網にかかって暴れている姿は見たが、つかんで近くに引き寄せたときには、すがたをよく見なかったので、詳しい姿はわからないということでした。
じじいの話によると、人魚は、オホーツク海にも日本海にいるようです。




