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石じじいの話・悲鳴の風
石じじいの話です。
これは、じじいが日本海に面する漁村で聞いた話です。
ヒスイを探しにいったことがあると言っていたので、おそらく新潟県の漁村でしょう。
その漁村では、「大きな悲鳴と共に吹いてくる大風」が恐れられていたそうです。
その風は、非常に強く、船が沈むことがありました。
また、その風によって、波が海岸に吹き寄せられて、家が流されることもありました。
非常に冷たい風でした。
その風が吹き始める前には、大きな叫び声があたりに響きわたったそうです。
その「声」は、樹木などによる風切り音ではなく、明らかに人の声でした。
女性の声でした。
冷たい大風が襲ってくる前に、かならず「女性の悲鳴が響き渡る」のですから、ある意味、安心でした。
数分(?)とはいえ、あらかじめ強風への対応、心構えができるのですから。
漁村の人たちは、風が来る前の、その女性の悲鳴を聞くと、鳥肌が立ったそうです。
女性や子供、病気の人は、腰が抜けたり失神したりするひともいたとか。
以前紹介した「ハカゼ」のような「不吉な風」の一種でしょうか。




