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石じじいの話・酒屋のおばさん、泣く
石じじいの話です。
これは、じじいの子供の頃の話です。
じじいの部落の近くの町には、酒屋がありました。
そこは、醤油も作っていました。
私の母が、その店からお酒や醤油を一升瓶で買っていた記憶があります。
その店には、アカという大きな犬がいました。
よく吠える犬でした。
登校中の、こどもじじいたちが近くを歩くと、さかんに吠えかかります。
こどもじじいや友人たちは、それをおもしろがって、アカにしばしばちょっかいを出してしました。
そのたびに、その店のおばさんが怒って、こどもじじいたちを追い払うのです。
それがまた、こどものじじいたちには、おもしろかったのです。
「怒りんぼおばさん」というあだ名をつけていました。
ツツジが満開の季節に、そのアカが死にました。
朝、学校の行く途中で、その店の裏庭を見てみると、いつもは、じじいたちを叱りつける、店のおばさんは、おろおろして泣いていました。
じじいは、アカが死んで怒りんぼおばさんが泣いていたことを、教室で友だちに、おもしろそうに話していました。
そうしているとき、じじいは、急に悲しくなって、泣いたそうです。




